顔芸
プロレスと「顔芸」。
一見、関わりがなさそうだが、どうしてどうして。
プロレスは、闘いのエンターテイメントである。
だから、相手に対する感情を、顔でわかりやすく表現することは当然といえば当然だ。
かつて、安生洋二(wikipedia)というプロレスラーがいた。
相手を挑発する、憎たらしい表情をさせたら、彼の右に出るものはいなかった。
新日本プロレスとUWFインターナショナルの対抗戦は、僕にしてみれば、彼のためにあったようなものだ。
現在ハッスルのリングに、彼に酷似したレスラー「アン・ジョー司令長官」が上がり、職人技を披露している。
マスクを被ったレスラーなのだが、それ越しでも客席に伝わってくる小憎らしさは、不思議にも安生洋二そのものだ。
安生好きの僕にしてみれば、まだまだこれからもプロレスファンを挑発し続けて欲しい。
さて、2006年のプロレス大賞MVPは、かつての安生以上かもしれない顔芸の使い手、鈴木みのる(wikipedia)が受賞した。
何の変哲もない名前の持ち主のこの男は、プロレス界の魑魅魍魎達の中、ここ数年独自の光を放ち続けてきた。
それが評価された格好だ。
彼の繰り出すプロレス技は、数えるほどしかない。
スリーパー、卍固め、腕ひしぎ逆十字固め、張り手・・・。
幾つかの方式の異なるパイルドライバーと、逆落としが、オリジナルあるいはそれに準ずる技だが、正直なところ、さほど見た目にインパクトのある技ではない。
しかし、それでも彼の試合は飽きない。
それは、技に至るまでの駆け引きが秀逸だからだろう。
その中でも、相手を挑発するお得意の顔芸「ベロ出し」が、試合の中で、刺激的なフックになるのだ。
相手の技を食らった後のベロ出し。
「利いてないもんね~!」
スリーパーをかけながらのベロ出し。
「ざまーみろ!」
正直なところ、とてもじゃないが好感の持てるルックスではないし、行儀もよろしくない。
性格に至っては、「世界一性格の悪い男」のキャッチフレーズまで頂戴する有様だ。
しかし、彼の突っ張り続ける態度は、プロレスファンの心を生々しく揺さぶる。
彼はこう言う。
「いいも悪いも関係ない。もう1度見たいと思わせたやつの勝ちだろ。」
その通り!
長年パンクラスで活躍し、いわゆる「純プロレス」での経歴は意外なほど浅い。
しかし、あの手この手で、とにかくファンの心を捉えて離さない彼の姿は、まさに「プロレスラー」だ。
2007年も、彼の顔芸に、歓声とブーイングで応えたい。
2006/12/15 sora